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ライトとレイミアの結婚式

モン娘は俺の嫁!

S-BOW様主催のエイプリルフール企画に参加してみました。
テーマが結婚ということもあり、ライトとレイミアの結婚式のお話。
しかし……色々何かあるかも……
まぁ、興味がある方は是非読んでみてください。

本文は下記続きからでよろしくお願いいたします。
あ、長いです。なんか、凄く……長いですw

―1―

純白のドレスに身を包み、少女は潤んだ瞳で青年を見つめる。
一点の汚れもないドレスは、少女の美しさを引き立て、見る者全てを魅了するような、雰囲気を醸し出している。
それは目の前の青年も例外なく、何か言葉をかけなければと思いつつも、ただ呆然とその場に立ち尽くしてしまっていた。

「ねぇ、ライト……あたし、変じゃない、かな……」
「え、ああ……その……」

沈黙に耐えかねたのか、少女は目の前の青年――ライト――に、おずおずと声をかける。
ここで気の利いた台詞でも出すことができれば、立派なものだが……あまり女性と接したこともなく、基本的に押しの弱い性格のライトは、口ごもるだけで上手く言葉を紡ぐことができずにいた。
そんなライトの様子に、少しばかり呆れた表情を見せるが、それもいつものことだと思い直したのか、少女は小さく――本当に小さく――苦笑を零した。

「もう、ライトってば、本当に相変わらずなんだから。こんな日くらい、男らしさを見せてくれても良いじゃない」
「い、いや……そうは言ってもな、本当に言葉が出てこなくて……」
「なぁにそれ、あたしには似合わないってこと?」
「ち、違うって! 似合いすぎてて、見惚れたから……言葉にできないってだけでっ! って、はっ……!?」
「……ぷっ、あはっ……あははははっ! 本当に単純なんだから!」
「れ、レイミア……おまえなぁ……」

からからと、鈴のような可憐な声を漏らして笑う少女――レイミア――に、ライトはがくりと肩を落とし、疲れたようにため息を零す。
押してダメなら引いてみろならぬ、引いてダメなら押してみろ。
これがライトと付き合う上で、彼の本音を引き出すために、レイミアが悟った一つの手段であった。単純に脅している……とも言うが。
だが、それは効果覿面、レイミアは望んでいた通りの答えを貰い、満足げに笑い続ける。そんな姿を見て、ライトは心の底から思う。

――ああ、本当に綺麗だ。レイミアを嫁に迎えることができて、本当に幸せだ。

と。

「レイミア様、ライト様……そろそろ、よろしいでしょうか?」
「あ、うん。分かったわ。ほら、ライト……行きましょう?」
「……ああ、そうだな」

差し出されるレイミアの手を取り、ライトは彼女をゆっくりと歩き出させる。
いや、歩くという表現は間違っているかも知れない。なぜならレイミアには足が無いのだから。事故で失った……といった理由ではなく、足の代わりに尻尾が生えているのだ。
ラミアという魔物の娘。それがライトの妻となり、死が分かつまでの永遠を誓い合うレイミアの正体なのだから。

「それじゃ、エスコート……お願いするわよ。旦那様?」
「ああ、任せてくれよお姫様」
「あら、なかなか洒落たことを言えるようになったじゃない。普段からそうだと嬉しいんだけどねぇ」
「それは言わないお約束……ってね」

互いに軽口を叩き合い、やがて小さく吹き出す。そんな二人を待つラミア族の女性の顔には微笑が浮かび、どこか羨望するような思いが視線に宿っている。
それもそうだろう。二人の格好から想像つくように、今日は女性なら一度は憧れるめでたい日なのだから。

「お二方とも、お戯れはそのくらいにして……長老が怒ってしまいますよ?」
「おっと、そいつはまずいな……あの婆さん、怒ったら怖そうだ」
「あはっ、良く分かってるじゃない。ま、怒ってもライトが何とかしてくれるんでしょう?」
「……努力はする」
「あははははっ、本当に……らしいわね~。それじゃ、本当に行きましょうか」
「オッケー」

どこまでも二人らしいやりとりに、先ほどまでの緊張はすっかり形を無くし、足取りも軽やかに扉をくぐり抜けていく。
扉をくぐれば、二人を祝福に来た、大勢の知り合いが拍手で迎え入れてくれるだろう。おそらく、ちょっとした問題も、同じように迎えてくれるだろう。
だが、それで良い……と二人は一緒に思う。
今日は一生の思い出になる日なのだから、それくらいのアクシデントがあった方が面白い。何より二人がそれを望んでいるのだ。そうならない方がおかしいだろう。

そう……今日は、二人が永遠を約束する結婚式なのだから。


―2―


なぜ結ばれてから数年も経った今になって式を挙げることになったのか……それは、つい数日前までさかのぼる。

「え……? あの娘、結婚するの?」

人と魔物が共存する珍しい村の広場で、いつものようにお茶をしながら、レイミアは聞かされた言葉に、目を見開いて驚いてしまう。
その驚きは相当のもので、思わずかじっていた焼き菓子を口から落としてしまうほどだった。

「ああ、あの娘も適齢期だからねぇ。このまま行き遅れるんじゃないかって心配してたんだが、どうやら良い縁に恵まれたみたいだよ」
「あらあら、それは素敵な話ですわね奥さん」

そんなレイミアに気づいたのか否か、二人の女性はしみじみと、その喜びを噛みしめている。
なんせ、ここは人と魔物が共存する村。当然、暮らす者も人間や魔物などといった垣根を気にしたりはしない。
だが、世界において、この村が異端であることは変わりない。それを受け入れてくれる者など、本当に数えるほどしかいないのも確かだ。
だからこそ、この村に住む者は……行き遅れることが、少なくはない。村の中で結ばれれば問題はないのだが、そもそも住まう者は既婚者や子どもが大半な現状では、それもあまり期待はできない。

「え、と……その相手ってのは、ここを認めてくれてるってこと?」

だからこそ、おずおずと放心から戻ったレイミアは、自分の中で一番気になっていることを尋ねた。それを許容できないようでは、この村の者と結婚するなんてことは、できないのだ。

「ああ、そうらしいよ? わたしも遠目でしか見てないけど、ありゃ、ずいぶんとしっかりした男だったねぇ」
「まぁ、ライトくんほどじゃないけど……やっていけると思うわよ」
「そうなんだ……うん、それなら良いのよ。良かったじゃない」

それだけ聞けたなら十分と、レイミアは取りこぼした焼き菓子を再び口に含む。その表情からは、結婚する娘を祝福することと、少しの安堵が見受けられる。

「あっはっは、レイミアちゃんも安心したんじゃないかい? あの娘、ライトくんに少しだけ気があったみたいだし?」
「ちょっ、なんてこと言うのよ! べ、別にそんなこと気にしてなかったわよ!」
「おやおや無理しちゃって。本当は気が気じゃなかったくせに!」
「あのねぇっ……!!」

からかうような女性たちの言葉に、レイミアは顔を真っ赤にし、肩を震わせながら睨みつける。しかし、相手も本気で睨まれていないことが分かっているのか、ますます笑みを深くし、物言いたげな視線をぶつけてくる。

「な、なによ。そんな目をしたって、無駄なんだから……あ、あたしは、ライトを信じてるんだから」
「あらあら、ライトを信じてるんだから……ですって!」
「いやぁ、若いってのは良いねぇ。そんな台詞がサラッと言えちゃうんだから」
「何言ってるのよ……二人とも、まだまだ若いじゃない」
「あっはっは! こんなおばさん二人に若いだなんて、嬉しいこと言ってくれるねぇ!」
「ほんとほんと。あのじゃじゃ馬姫が、ずいぶんと優しくなったもんだ!」
「これも全部ライトくんのおかげかねぇ! わたしがもう少し若ければ、惚れちまうねぇ!」
「あらあら、今からでも遅くはないかも知れませんよ奥さん」
「なっ……!?」

豪快に笑う二人の女性の言葉に、レイミアは慌てたように机を叩き、勢い任せに立ち上がってしまう。すぐさまそれが間違いだと気づくが、時すでに遅し……二人の女性は互いに顔を見合わせ、格好の獲物を見つけたとばかりに、小さく唇を歪める。

「おやおや、ライトくんを信じていると言ったわりには、ずいぶんと慌てているじゃないかい」
「そうですねぇ……わたしたちに取られる、とでも思ったんでしょうか」
「はっはっは、いやいや可愛らしいじゃないかい。そうやって焦ったりするのも、若さだねぇ」
「あ、あああ、あんたたちぃ……!!」

事実を指摘され、恥ずかしいやら悔しいやら、レイミアは爆発寸前といった感じになってしまっている。そんなレイミアの姿に、やれやれと肩を竦めて、二人の女性はいそいそと帰り支度を始めてしまう。
本日はお開き……そういうことなのだろう。

「ちょっと、言うだけ言って逃げるつもりなの?」
「いやいや、わたしらはもう若くないからねぇ……レイミアちゃんとやりあう度胸はないのさ」
「そうそう。それに、レイミアちゃんも、わたしたちに構ってる場合じゃないでしょうし」
「は……? 何を言ってるのよ。今日は別に用事もないし……」

と、そこまで口にして、レイミアは二人の女性が、いっこうに笑みを消さないことに気がつく。単純に笑っているだけなら、気にもしない事柄だが、二人の笑みはどう見ても、策が実ったような……底意地の悪い笑みをしているのだ。

「ま、まさか……」

レイミアの脳裏に小生意気な二人の少女の姿が浮かび上がる。
目の前にいる女性たちの娘であり、こういったお茶会には必ずといって良いほど着いてきているのだが、今日に限ってその姿を見ていない。
そこから導き出される結果は……ただ一つ。

「あ、あんたたち……あたしを嵌めたわね……!」
「おや人聞きの悪い。わたしらは、可愛い娘の頼み事を聞いてやっただけの、善良な母親さ」
「どうしてもライトくんと話したいって言われたらねぇ……わたしたちも娘は可愛いわけだし……ねぇ?」
「な、ななな……なななななな……っ!」

あっけらかんと言い放つ女性たちに、レイミアの頭は沸騰し、まともな言葉すら口にすることができない。そんなレイミアの姿を見て、女性たちは片付けを終え、優雅に頭を下げる。

「わたしらも、鬼じゃあないさ。だからこそ、こうして適度に切り上げてやろうって思ってるんだがねぇ……」
「わたしたちに文句を言っていたら、もしかしたらライトくんの身に危険が……ああ、そうなっても責任はとれませんよ?」
「ぐ、ぐぬぬぬっ……あ、あんの小娘たちがぁぁぁぁぁ!!!」

余裕の笑みを浮かべる女性たちから受ける屈辱に、レイミアはその身を震わせながら、こうしている場合じゃないとばかりに、机を叩きながら立ち上がる。力加減ができずに、机がへこんでしまうのはご愛敬だろう。
そのまま瞳をつり上げ、木々を震わせるほどの声で叫びながら、全速力で家に向かって這いずっていく。

「ふふっ、頑張ってね~」
「ライトくんに当たるんじゃないよ!」
「うっさい!! あんたたちも、後で覚えてなさいよーー!!」

中指を立てながら後ろ向きで這いずるという、とても器用なことをしながら、レイミアはその場から去っていった。
その姿を見たら、誰でも同じ感想を抱くことだろう……そう、負け犬の遠吠え……と。

「あらあら、これは後が大変でしょうかね」
「なぁに、ライトくんが何とかしてくれるでしょう」

そんなレイミアを見送る女性たちは、どこまでも暢気だった。


―3―


「ライトお兄ちゃん遊びましょ~!」
「あの、お邪魔しますライトさん」
「ん? なんだプリムにローズじゃないか。どうしたんだ二人とも……今は、お茶会の時間じゃないのか?」

勢いよく扉を開けて飛び込んできた二人の少女に、ライトは瞳をぱちくりさせて、小首をかしげる。
二人の来訪はもはやいつものこととなっているが、普段なら少女たちは母親とともにお茶会に出ているのだ。驚くのも無理はないだろう。

「えっとね、今日はどうしてもライトお兄ちゃんと遊びたかったから、こっちに来ちゃった!」
「えっと……迷惑だった?」
「いや、迷惑ってことは無いけど……」

言って、ライトは少しだけ顔を顰める。二人が来ることに何ら問題はない。だが、それを知ったレイミアが烈火の如く怒り狂う姿をライトは容易に想像できてしまう。それが、自分を巻き込んでしまう未来まで、はっきりと見えるのだ。

「あ、レイミアちゃんのことなら大丈夫大丈夫! お母さんたちが引き受けてくれたから!」
「ママたちも、なんだか張り切ってたよ」
「おいおい……」

太陽のような輝かしい笑顔で、とんでもないことを言い放つ少女たちに、ライトは思わず手を額に当てて呻いてしまう。
すでに分かっていたことだが、人間と魔物が共存する村に住むだけあって、その住人たちはどこか普通とは違う。
年頃……というには幼いが、それでも自分の娘を若い男の下へと向かわせるのは、少々危機感が足りない気がするライトである。

――信頼されてると思えば、悪い気はしないんだけどな。

「ライトお兄ちゃん? どうかしたの? なんだか変な顔してるけど」
「……格好良い顔が台無しだよ?」
「ん、ああ……悪い。ちょっとこの村の行く末について考えてた」
「ぶ~、またそんな難しいこと言って~……あたしたちと遊びたくないの?」
「いや、そういうわけじゃないから。そんなにむくれるなって」

自分たちを見ずに考え事をするライトが不満なのか、プリムとローズは、少しだけ頬を膨らませ抗議する。その愛らしい姿に、ライトは微笑ましい気持ちになりながら、今まで手をつけていた作業にきりをつける。

「あ、ライトさん……お仕事中だった?」
「え~? だったら遊べないの?」
「ははっ、別に仕事ってわけじゃないって。ちょっと料理のレシピを纏めてただけ」
「うわ。ライトお兄ちゃんレシピなんて作ってるんだ。まめだな~」
「素敵な主夫になれますね」
「いや、それは……」

二人からの讃辞に照れくさくなったのか、ライトは頬を掻きながら誤魔化すように柔和な笑みを浮かべる。何もライトだけが作ってるわけでもないのだが、それを言う必要もない。度重なるレイミアと二人の争いに巻き込まれたライトならではの、処世術といったところだろう。

「それで、今日はまた何をして遊ぶんだ?」
「あ、そうだった! えーと、ちょっと言いづらいことなんだけど……」
「言いづらいこと?」
「うん。レイミアさんがいないから、ちょっと聞きたいことがあるの」
「そうそう! レイミアちゃんがいたら、ぜ~ったい邪魔してくるんだもん! あの年増」
「こ、怖いこと口に出すなよ……また殴られるぞ」
「大丈夫大丈夫! だって、ここにはいないんだし!」
「いないなら、何を言っても大丈夫」

――絶対ばれる。あいつの勘は、本当に獣じみてるから。

少女たちから出る恐ろしい単語に、ライトは顔を青ざめながら、それとなく注意を促す。しかし、相手も慣れたもので、本当にいつも通り、楽しそうにレイミアの愚痴をこぼしている。
おそらく少女たちの頭からは消えているのだろう。かつて愚痴をこぼす度に、レイミアによって制裁が加えられていることを。
それを知りながら、止めることのできないライトも、なかなかに情けないのだが。

「……こほん。で、俺に話したいことって何なんだ?」
「あ! 忘れてた! えーと……ローズ、何だったっけ?」
「もう……しっかりしてよプリム。ほら、結婚式のお話」
「あ~、そうそう! 結婚式だ結婚式!!」
「は……? 結婚式? なんだ、誰か結婚でもするのか?」
「あ、うん。隣の家のお姉ちゃんが……って、違う! ライトお兄ちゃんの結婚式!」
「おお、なかなかノリの良い……って、はい? 俺の?」
「そうだよ。ライトさんとレイミアさん……夫婦なんだよね。認めたくないけど」
「いや、そこは認めてくれよ……」
「絶対やだ! で、それは置いといて! 何で結婚式しないの?」
「む……そう言われても……」

降って沸いたような質問に、ライトは思わず口を閉じて考え込んでしまう。正直な話、ライトはそのあたりのことをまるで考えていなかった。
事情が事情だったため、そうそうおおっぴらにできない理由があったのだ。なんせ、レイミアを式の最中にかっ攫ってきたのである。いくらラミア族の長老から許しを得たとしても、今更式をあげようなんて気にはなれなかった。

「う~ん……ほんと今更と言えば、今更だよなぁ……」
「むっ! ダメだよライトお兄ちゃん! そんなこと言ったら!!」
「え、いやだって……」
「そうです。女の子にとって、結婚式は一度は夢に見るものなんだよ?」
「うっ、いや……そうは言ってもだな……」
「レイミアちゃんだって、きっとしたいって思ってるんじゃないかな?」
「むむむ……」

そうまで言われ、ライトは眉間に皺を寄せてしまう。男には分からない問題だが、少女たちにこうまで言われては、考え込んでしまう。

――やっぱり、レイミアも結婚式を挙げたいんだろうか?

何せ、あれが結婚式である。一度は夢見る行事があれでは、さすがに哀れだろう。
そこまで考えると、今までの疑問が嘘のように解け、ライトの瞳にやる気がみなぎってくる。

「そうだな……うん。確かに……」
「……あはっ、ライトお兄ちゃん良い顔してるよ! あたし惚れちゃいそう。あ、もう惚れちゃってるけど!」
「あーずるいよプリム。わたしだって、ライトさんのこと好きなんだから」
「ははっ……」

結局いつも通りのやりとりを始める二人を見ながら、ライトは小さく笑みを浮かべる。今まで考えたことも無かったことを気づかせてくれた二人。それに感謝を示すように、自然と二人の頭を撫で回す。

「うにゃ? ど、どうしたのライトお兄ちゃん……い、いきなりだと照れちゃうよ」
「ん、いや……ちょっとしたお礼だ。大事なこと言ってくれたからな」
「あふぅ……気持ち良いです。もっと撫でて……」
「はいはい」

それを気持ち良さそうに受け入れる二人の姿に、ライトは和やかな気持ちに浸っていた。
だからこそ……普段はしないような、ちょっとしたミスに気がつかなかったのだろう。

「へぇ……ずいぶんとまぁ……羨ましい、もとい……面白いことをしているのねぇ……」
「げっ……!?」

腹の底から絞り出した恐ろしい声に、ライトは顔を青ざめる。それが何かを確認するまでもないが、振り返らないわけにもいかず、ライトは冷や汗を垂らしながら、顔を背後へと向ける。

「ひぃっ!?」

そこには悪鬼がいた。あまりの怒りに髪は逆立ち、瞳はらんらんと輝いている。よく見ると、周りの建物が石化し始めているのも確認できるだろう。

「レイミアちゃん!? も~! お母さんたちは何をしてるのよー!」
「……はぁ。まったく、空気を読んで欲しい」
「……っ、良い度胸じゃない小娘たち……!」

そんなレイミアの様子にも気がつかないのか、気がついてなお、その態度をとっているのか……少女たちは、わざわざ挑発するような言葉を投げかける。
元々沸点が高くないレイミアは、その挑発に逆らうこともできずに……爆発した。

「今日という今日は許さないわよ! ライトはあたしのものだって……ハッキリ分からせてあげるわ!!」
「ふ~ん! レイミアちゃんに捕まるほど、間抜けじゃないもんね~!」
「わたし、あまり自信ない……けど、曲がり角のレイミアさんには負けない」
「ぐぬぬぬ……相変わらず口だけは達者な小娘たちめぇぇ……!!」
「お、おいおい……」

早速とばかりに、部屋中を駆け回る三人の姿に、ライトはため息混じりに外へと避難する。あの様子だと、しばらく好きにさせないと収まりはしないと、これまた嫌な経験で察してしまったのだ。

――ま、いつも通り……しばらくしたら、止めに入るか。

その時生じるであろう生傷を想像しながら、ライトは憂鬱げに壁を背にして腰を下ろす。いつもなら、それだけで終わるところだが、今のライトには考えるべきこともある。
二人の少女に気づかされたレイミアとの結婚式。その構想を練りながら、雲一つ無い空の下、中から聞こえる喧噪に耳を傾けていた。


―4―


「なぁレイミア……ちょっと話があるんだけど……」
「……なによ。突然改まっちゃって」

夕食も終わり、後は寝るだけとなったタイミングを計って、ライトは珍しく真面目な表情を見せながら、レイミアに声をかける。
レイミアも昼間のことで若干不機嫌ながらも、その真剣な様子に、訝しみながらも耳を傾けている。

「そのだな……式、挙げるか?」
「はぁ……? しきって……何を言ってるの?」
「いや、だからさ……結婚式だよ。俺たちの……良く考えたら、その辺しっかりしてなかったしさ……」
「………………」

言葉の意味が分からなかったのか、最初は疑問げに聞き返したが、改めてライトが告げると、目を大きく見開き沈黙してしまう。
それもすぐに終わり、意味を理解するや、きょろきょろと視線を彷徨わせたり、言葉にならない呻き声を上げ始める。

「あ、あの……レイミア……?」
「は、はいっ!?」
「……なんでそんなに挙動不審なのかは分からないけど……どうなんだ?」
「い、いやいや、どうなんだって言われても……そんな急に……そ、そりゃ嫌じゃないし……というか、どっちかって言えば挙げたいけど……でもでも……」
「あー、少し落ち着け……」

目に見えて狼狽するレイミアを制止しながら、ライトは小さくため息を零す。やはり、レイミア自身も結婚式を挙げたいという意志はあったのだろう。言葉の節々から、それは感じられ、ライトは思い切って告げて正解だったと安心する。

「そ、そもそも……なんで急にそんな話が……って、もしかして……」
「ああ、プリムとローズに言われたな……その、考えが足りてなかったみたいで……」

どこか申し訳なさそうに告げるライトを見て、レイミアは驚いていた表情を隠し、苦笑を浮かべる。
夫婦となって数年が経つというのに、今までそんなことを考えもしなかったライトに呆れたのか、あまりにも突然な提案に呆れたのか、そのどちらもなのか。
レイミアは柔らかな視線をライトに向けながら、はっきりと自分の意志を言葉にする。

「…………そんな余裕、無いでしょう?」
「うっ、それは……」
「それに、あたしはライトと結ばれただけで幸せなの。これ以上望むなんて、罰があたっちゃうわよ」
「む、そう言われてもなぁ……」
「はいはい。もう話はおしまいね。言っとくけど、変なこと考えないでよ?」
「…………分かった」

あまりにあまりな現実を突きつけられて、ライトは呻くように頷く。しかし、その顔はどうにも納得できていない様子で、レイミアは知らずため息を零す。

「ほら、寝るわよ?」
「ああ」

生返事に近い言葉を口にしながら、ライトはベッドへと潜り込む。レイミアも、それに続くように身体を横たえると、すぐさま瞳を閉じてしまう。
そんなレイミアの様子を見ながら、ライトは小さく頷くと、自らもゆっくりと瞳を閉じる。

――行動は、早いほうが良いよな……

いくら考えるなと言われようと、一度決意してしまったことを覆すほど、ライトは大人ではなく……また、何か行動が起こせないほど子どもでもない。
明日からの忙しい日々を想像しながら、ライトは深い眠りについていった。


―5―


「で、儂のところにきたというわけか……」
「ああ。その……無茶を言っていることは重々承知してるんだけど……何とかならないかな?」
「ふむ……」

次の日になり、早速行動を開始したライトは、まずはとレイミアの生家であるラミア族の下を訪れていた。
長老は、突然の来訪に驚きはしたものの、その相談内容を聞き、額の皺を深めながら何事かを思案する。

「式を挙げること自体は反対せんよ……じゃが、準備が必要じゃ……」
「それは、分かってる……でもなるべく早く、というのは無理かな……?」
「そうじゃな……結婚式というからには、着るものが必要じゃろう……おぬしのものも、姫のものも……それらを用意する宛はあるのか?」
「それは……」

長老に告げられた言葉に、ライトは沈黙を返してしまう。正直に言って、ドレスを用意するような金は無い。生活が苦しいわけでは無いが、それでも高価なものを買うほどに、余裕は無いのだ。
しかし、それで諦めるなどといった選択肢があるなら、初めからこんなところに来たりはしない。

「ふむ。何とかする……といった顔じゃな……」
「ああ。正直宛はないけど……それでも、レイミアにちゃんとした式を挙げさせてやりたいから……」
「…………くくっ、言うではないか」

ライトの言葉に、長老は顔に広がる皺を深くして破顔する。これほどレイミアのことを想っている若者に、共感するものがあったのだろう。
そのまま曲がった腰を伸ばすと、おもむろにライトへと近づき、その両手を柔らかく握り込む。

「おぬしの気持ちは理解した。何、設備や人の手配などは儂に任せるが良い。おぬしは……せいぜい立派なドレスを用意するが良い」
「……婆さん……ありがとう! この恩は必ずどこかで……!」
「そう気構えずとも良い。それに……儂には、おぬしに多大な借りがあるのじゃよ」
「…………は?」

そう言われ、ライトは鳩が豆鉄砲を食ったように、表情を変化させる。そんな話は今まで聞いたことも無いし、思いつく限り、長老に貸しを作った覚えも無かったのだ。
しかし、そんなライトを見て、長老はますます笑みを深くし「分からぬのならば良い」とだけ告げ、あっさり背を向けてしまう。

「ちょ、ちょっと……」
「儂に構っている場合ではないじゃろう……時間は有限、早く式を挙げたいなら、迅速に行動するが良い」
「あ、ああ……わ、分かった……」

今ひとつ納得できていないのか、小さく顔を傾けながらも、ライトは長老に挨拶すると、走り去るように部屋から飛び出していく。
そんなライトの姿を見ながら、長老は穏やかな表情でゆっくりと腰を下ろすと、一族の者を呼びつけるために鈴を鳴らす。

「ふふっ、まったく……いつも唐突な人間じゃ……」

長老が思い出すのは、レイミアを連れ去りに来た日のこと。もう数年も前のことだというのに、彼女の脳裏は昨日のことのように思い出すことができる。
人間と魔物。種族を超えた恋愛の模様。そこから続く、未来の姿……それを思い浮かべるだけで、彼女の心には優しい気持ちが溢れてくる。

「姫を愛してくれたこと……そのような世界に導いてくれたこと……それは、儂にとって十分借りとなることなのじゃよ」

これから仕立て屋探しに精を出すであろうライトの姿を思い浮かべ、小さく笑い声を漏らす。
果たしてどのようなドレス姿を見させてくれるのか……それを楽しみにしながら、彼女は二人の式に相応しい舞台を用意するための行動を開始するのだった。


―6―


「さて、どうしたもんかなぁ……」

里に戻ってきたライトは、新たに発生した問題に対し頭を捻りながら、散策を続けていた。この里に存在する人間や魔物に仕立てができる者などいないだろう。
ならば外部に頼むしかないのだが、それはそれで少しばかり問題がある。何せ、この里ははぐれ者たちが住まう場所なのだ。人間たちの過ごす街や、魔物が住まう集落に問題を持って行けるはずもない。

「ぐぐぐ……もしかして詰んだか……? いや、でも諦めるのは……」
「おや、ライトくんじゃないかい……どうしたんだい、難しい顔をしちゃってさぁ」
「あ、どうも……」

そんなライトの姿を見かけたのか、一人の女性が声をかけてくる。良く見ると、女性は二人組で、例の少女たちの母親だった。

「何を難しい顔してるんだい。せっかくの男前が台無しだよ?」
「そうですよ。何か悩み事なら、お聞きしますよ?」
「あ、ああ……そうだな……それなら、ちょっと聞いてもらえるかな」

自分では良い考えが浮かばなかったライトは、彼女たちにありのままを話し伝える。
レイミアとの結婚式を挙げたいこと、場所の確保はできたが、ドレスを仕立てる者がいないこと。なるべく早くしたいため、急いでいることなど。包み隠さず、話せるだけのことを話した。
最初は驚いていた女性たちだが、話を聞くごとに顔は綻んでいき、最後には心底嬉しそうに、大声で笑い始める。

「あっはっはっはっは! 良いじゃないかい! そういや、あんたたちは式を挙げてなかったんだねぇ!」
「うん、恥ずかしい話なんだけど……」
「ふふっ、別に恥ずかしがることないじゃない。今こうして必死になっているなら、それは誇るべきことよ」
「そうさ。それで、仕立て屋を探してるんだってね?」
「ああ……どなたか心当たりは無いですか?」
「心当たり……ですって奥さん……これはもう、腕を振るうしかありませんね」
「ああ、そうさね……久しぶりにやってみるのも良いねぇ」
「…………?」

ライトのことをそっちのけで盛り上がる二人に、疑問を浮かべながら、もしやという思いに駆られる。今の話しぶり、久しぶり……腕を振るう……そこから導き出される答えは一つしかない。

「もしかして……用意できるの!?」
「ああ、とは言っても、もう昔の話だからね……満足できるものができるかは分からないけどねぇ……」
「そ、それでも大丈夫! お礼は少ないけどするから……どうか!」

まさに青天の霹靂。このような身近にドレスを仕立てることができる人物がいるとは夢にも思わず、ライトは土下座せんばかりの勢いで頼み込む。
その姿を見た二人は顔を見合わせた後、そのあまりの理解して無さに、堪らず吹き出してしまう。

「へ……あの……?」

そうなると困るのはライトの方で、まさか自分の頼みを笑われるとは思っておらず、ただただ困惑するばかりであった。

「いや悪い悪い。ただライトくんがあまりにもバカなことを言うもんだから、ついね……」
「はぁ、バカなこと……?」
「そうよ……お礼だなんて、むしろわたしたちがしたいくらいなのに、それを……ふふっ……」
「は……?」

その言葉を聞き、ライトはますます困惑した顔をしてしまう。長老のところでもそうだったが、ライト自身には、本当に誰かに礼をされる覚えなど無いのだ。

「分からないかい? わたしたちは、これでもはぐれ者なのさ……ライトくんは、そんなこと思って無いだろうけどね」
「そんなわたしたちを受け入れてくれる里……その場所を作ってくれただけで、わたしたちは貴方に感謝する理由があるのよ……?」
「その感謝を形にして返せるんだ。礼なんてもらっちゃ、それこそ罰があたってしまうってもんさ!」
「いや、それは……」
「まぁまぁ、納得できないでしょうけど……これも何かの縁と思って……ね?」
「そうさ。誰が見ても美しいって思える仕上がりになるよう、腕を振るわせてもらうさ!」
「けど……」

それでもライトは渋る。さすがに、ただで引き受けてもらうのは、どうにも納得できなかった。そんなライトの様子に、苦笑じみた笑みを浮かべながら、どこか嬉しげに彼女たちは口を開く。

「だったら……最高の式を見せておくれよ……わたしたちへの礼は、それで十分さ」
「あら、それは素敵ですね……ね、ライトくん……お願いできるかしら」
「…………」

そうまで言われては、ライトに返す言葉などありはしなかった。彼女たちの暖かな気遣いに感謝しながら、ただ溢れ出そうになる涙を堪え、精一杯笑みを浮かべる。

「ああ! まかせてくれ……誰が見てもうらやむような式にしてみるよ!」
「ははっ! 良く言ったよ! それでこそ男の子だね!」
「ふふっ、楽しみが増えて嬉しいですね……それじゃあライトくん……またね」
「ああ。本当に……ありがとうございます!」

にこやかに手を振って去っていく二人に、ライトは見えなくなるまで頭を下げ続けていた。
やがて二人が見えなくなると、ライトは急ぎ家へと戻っていく。あまり長い間家を空けてはレイミアに疑われてしまう。
今回の件は、最後の最後までレイミアに黙っている。そう決めていた。

「……レイミアの驚く顔……楽しみだな……」

そのときのことを考え、自然と浮かぶ笑みを隠そうともせず、上機嫌のまま、ライトは家へと戻っていった。


―7―


それから幾ばくかの日にちが経ち、ようやく結婚式の当日がやってきた。ライトは渋るレイミアを連れ、ラミア族の里へとやってきていた。

「ねぇ、どういうつもりなのよ……今更ここに来る必要なんてないでしょう?」
「いや、その気持ちは分かるけどさ……ほら、ここだここだ」
「はぁ……何なのよいったい……急に里帰りでもしたらなんて言ったと思ったら、強引に連れ出しちゃったりして……」

ぶつぶつと文句を垂れながらも、いつもと違いやけに積極的なライトに逆らうこともできず、レイミアは言われるがままに、あてがわれた部屋へとやってきてしまった。
やけに態度がおかしいライトはともかく、どうにも里の魔物たちも浮き足立っており、そのことがレイミアに一抹の不安を感じさせていた。

「ほらほら入った入った……」
「はぁ、分かったわよ……まったく、何を企んでいるんだか……って、あ、れ……?」

ため息混じりに扉を開けたレイミアは、飛び込んできたものに、その勢いをそがれ、呆然と立ち尽くしてしまう。
視線だけをライトに向けると、彼は笑いながら小さく頷き、部屋の中へ入るように、背中を押す。

「…………これって」

思わず呟いてしまうほどの存在感を示すそれに、レイミアは恐る恐る手を伸ばす。純白に彩られた、見るだけで上物を使っていることが分かる生地。触れたらなおのこと、これを仕立てるのに、どれだけの想いが込められているのかが分かる。

「うん、良いできだ……久しぶりだって言ってたのに、本当に凄いな……」
「これ、どうしたのよ……それに、あたしに見せたりして……」
「ははっ、分かってるだろう?」
「…………」

どこか悪戯が成功したかのような、子どものような笑みを浮かべるライトから視線をそらし、レイミアは再びそのドレスへと視線を向ける。
何のために用意されたかなんて、すぐさま理解できた。つい先日話したことでもあるし、忘れることなんてできるはずもない。

――まったく、余計なことするなって……言ったのに……

「れ、レイミア……?」
「え……?」
「なっ、なんで泣くっ!? そ、そんなに嫌だったのか……!?」
「な、いて……? あたしが……?」

そう言われて、レイミアは自分の頬へと手を伸ばす。すると、そこには指摘通り涙が道を作り、止まることなく溢れ出ていた。

「わ、悪い……そんなに嫌だとは……」
「ちがっ、違う……の……これは、その……」

心底申し訳なさそうに唇を噛みしめるライトに否定し、レイミアは小さく首を振る。
そう、これは嫌だから……悲しいから流れる涙などでは無く、むしろその逆だったのだから……

「レイミア……?」
「ねぇ、ライト……あたしね……本当は、したかったの……ライトとの結婚式。本当に、心から願ってた……」
「……ああ。それは、何となく分かってたよ」
「だからね……こうして、くれるのが……嬉しくて……ただ、それだけなの……」
「…………そっか。そりゃ、良かった」
「うん……」

涙を隠すことなく、レイミアは自然と華やかな笑みを浮かべていた。その表情には、幸せな想いが溢れ、見ているライトまで、どこか嬉しい気持ちになって、笑顔を浮かべてしまう。

「はいはい。お二人さん……そろそろ良いかい?」
「……っ!?」
「なっ、いつの間に……!?」

そんな和やかな雰囲気に割ってはいるかのように、ドレスを仕立てた本人が、声をかけてくる。その表情は、笑いを堪えているようで、一部始終を見られていたことが伺える。

「話ならいつでもできるだろう? ほら、時間もあるんだし……準備をさせてもらって良いかい?」
「そうですね……ライトくんも準備が必要でしょうし」
「あ、ああ……そ、そうだな……」

どこか呆然としながらも、自分の役目を思い出したのか、ライトは一度レイミアに視線を向けると、いそいそと部屋から退出していく。
そんなライトの姿に、いつも通りの雰囲気を感じて、レイミアは小さく吹き出してしまう。

「あはっ、ふふっ……本当に、ふふっ……」
「そう笑ってやるもんじゃないよ。これは全部、ライトくんが用意したものなんだからね」
「ええ、分かってるわよ……全部、あたしの為だってことも……ね」
「ふふっ、そこまで分かってるなら、話は早いわ……ね、奥さん……」
「ああ。立派な花嫁姿にしてやるから、おとなしくしてるんだよ?」

わざとらしく腕まくりまでする女性に、レイミアはまた溢れ出そうになる涙を堪え、輝くような笑みを浮かべる。
ここまでお膳立てをしてくれたライトと、それを手伝ってくれた者たち、全てに感謝をしながら……

「…………ええ。お願いするわね」

ハッキリと、言葉を口にした。


―8―


そして話は冒頭へと戻る。
厳かな造りのホールに集まったのは、人間魔物問わず、ライトとレイミアに関係のある者たち。それほど交友関係が深いわけでもなく、集めること自体は問題無く行われた。
それらの瞳が見つめる中をライトとレイミアがゆっくりと進んでいく。

「……ふむ。なかなか様になっておるではないか」
「もう……こんな時くらい、それらしい態度をとってよ……」
「いや、すまぬ。年寄りというものは、そうそう自分を変えられんのじゃよ」
「ははっ……婆さんらしいな……じゃ、しっかり頼むぞ?」
「ああ、分かっておるよ……」

さて……と一息つけ、長老は雰囲気をがらりと変え、二人の顔を見比べる。その瞳に見据えられても、ライトとレイミアに変化はなく、そのことに満足げに頷くと長老は、祝福の言葉を口にする。

「あまり格式ばったことをしても、おぬしらは喜ばんじゃろうから……一言だけ……二人は、ここで……永遠を誓えるか……?」
「…………」
「…………」

どこか重苦しくも、真剣に尋ねる長老に、ライトとレイミアは、一度顔を見合わせると、揃って首を縦に振る。

「ああ……俺こと、ライトは……どんな時でもレイミアの側にいて、最後の最後までともに在ると……誓うよ」
「あたしも……レイミアは、いずれ別れるまで……いいえ、死してなお、想いはライトとともに在ると……誓うわ」
「そうか……うむ……そうか……」

二人の誓いを聞き、長老は目の端に小さく涙を浮かべる。周りからも、ため息のようなすすり泣くような声が聞こえる。
誰もが二人の誓いを祝福し、またその愛の深さに感動を覚えていた。

「ならば……その誓いを互いに交わし、契約の口づけを……」
「ああ……」
「ええ……」

すっと一歩後ろに下がった長老に頷き、ライトとレイミアはお互いの顔をじっと見つめ合う。
レイミアの瞳は静かに揺れ動き、今にも零れてしまいそうな涙を堪えているのが、ライトには見て取れた。それを隠すかのように、そっと頬に手を当て、二人はゆっくりと顔を近づけていく。

「ねぇ、ライト……さっきの言葉、ちゃんと守ってよ……?」
「ああ、当然だろ……俺たちは、ずっと一緒だ……嬉しいことも、悲しいことも……楽しいことも、苦しいことも……きっと、二人なら超えていけるから……」

ゆっくりと互いの気持ちを囁きあい、その距離を縮めていく。誰もがひっそりと見守る中、その誓いを永遠のものとする口づけが交わされた。
天窓から降り注ぐ光が二人を照らし、誰からかは分からないが、小さな拍手が広がっていく。この場にいる全ての者に祝福され、ライトとレイミア……種族を超えた二人の愛は、ここに永遠を約束されたのだった。

いずれ、この二人の話がきっかけとなり、人間と魔物の共存が本格的に動き始める。世界は確実に、その方向を歩んでいくのだが、それはまだ先の話……今の二人には、分かるはずもない未来。ただ一つ分かりきっていることは……

「……大好きよ……ライト、世界で一番、誰よりも……愛してる」
「俺もだ……レイミア……」

種族を超えた愛は、実を結ぶと言うこと。それが、唯一の真実だということだけだろう。


さてさて……この後、いつも通りライトが酷い目にあったり、おしゃまな少女たちが乱入したり、ブーケトスで波乱があったりするのだが、それは語らぬが良いだろう。
この二人がどうなるのか、色々な困難が待ち受けるだろうが、それはまた別のお話。二人の行く末に、幸多からんことを願い、ひとまず終幕。


―完―




あとがき。
というわけで、いかがでしたでしょうか。
こう思った人もいるハズです……レイミアの出番少なくね?w
でも、そんなもんです。
結婚式ネタを書こう。
式を挙げるために頑張る人間ライトくん。
というコンセプトで作成されたが故のことです。
書き終わってから、ちょっと失敗したかもと思いましたが、こういったほのぼの話も悪くは無いですよね?
なにげに、長老だとか、おばさまとか、小娘2人組とか、ゲームキャラ総出演でございます。
このような企画を立てていただいたS-BOW様に感謝します!
では、最後に……

レイミアはライトの嫁っ!!

ではでは。
影花でした。

コメント

No title

乙です!
レイミアのボイス脳内再生余裕でしたw
やっぱりレイミアはかわいい(*´ω`*)

No title

しあわせにですぜ

ひゃつほー

No title

なんという甘甘なSS!
どのシーンも想像余裕で、最後まで楽しく読ませていただきました^q^

二人にはこれからも末永くイチャイチャしてもらいたいものですw

ハジメマシテ

ライトはレイミアの嫁!

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