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海賊たちのハロウィン?

人外オンリーイベント、来て頂いた方ありがとうございます!
同人誌など初めて作成したので、どんな感じか、どきどきしております。
ご満足頂けたでしょうか。そうだったら幸いです。

さて、ハロウィンらしいので短編を書き書きしてみた。
ツイッターで宣言してから、一気に書き上げたので内容はどうだろう?w
しかし相変わらずライムの扱いが酷い。
いや、これは愛があるからだよ……と言ってみる。
というわけで、興味がある方は続きからどうぞ。

-1-

「お父様! トリックオアトリート!!」
「うわっ!?」

潮騒を聞きながら海へと視線を這わせていた俺に、愛娘であるヴェーラが突如として体当たりをかましてきた。ドンという衝撃を受け、危うく海に落ちそうになるが、寸前のところで踏みとどまる。

「ど、どうしたんだよヴェーラ。危ないじゃないか」
「ふっふ~ん! お父様! トリックオアトリート!」
「い、いや、だから……なんだそれ?」

どこか自慢げな表情で、胸を張り手を差し出してくる。しかし、俺はその意味するところが分からず、ぽかんとするしかできない。
長い航海人生だが、こんな呪文のような言葉を聞くのは初めてだ。どこで知ったのか……可能性としては、ヒビキあたりだろうか?
そういえば、あいつは異世界の人間だ。この世界にない風習を知っていても不思議ではない。

「むぅっ! お父様! トリックオアトリート!!」
「い、いや……だから、俺にどうしろと言うんだ……」
「むぅぅぅっ!! くれないなら……お父様といえど全力で……!」
「ま、待てっ!! 落ち着けヴェーラ!」

どんどん不機嫌になっていくヴェーラの様子に、薄ら寒いものを感じ、俺は咄嗟にコートのポケットを漁る。くれないと言っている以上、何か物を欲しているのだろう。考えろ、考えるんだ……ヴェーラは何を欲している……!?

「はっ……!」

その時、俺は目ざとく見つける……ヴェーラの着ているコートから見える、お菓子の山を……!
見た感じラキスの手作りだろうそれは、いつもならすぐに食べてしまうだろうに、今日に限っては後生大事に取ってある。これは重大なヒントだ。ヴェーラの奴、俺がこのイベントを知らないと思って、ヒントを残してくれるとは……憎い演出じゃないか。

「ふっふっふ……ヴェーラ、お前が望んでいるものは……これだなっ!!」
「お、おおぉぉぉっ!! それは! 七海が一つ東の虹海でしかとれないと噂の……虹色のゼリー!!」
「はっはっはっは! 良く勉強しているな! さすがは俺の娘! その勤勉さに免じて、これをやろう!!」
「うわーい! さっすがお父様! だ~いすき!!」
「おお! 俺も大好きだぞ!」
「ぎゅ~~~!!」

感激のあまり抱きついてくるヴェーラに、俺の頬は緩みっぱなしだ。何にせよお菓子を渡すことで正解だったらしい。良かった。どうにか父親の威厳を保つことはできた。ヒントを残すように言ってくれたであろうラキスに感謝しながら、俺はヴェーラを抱きしめ、くるくるとその場で回っていた。


-2-

「さて! ここに並んでいるみんな! どうして、こうなってるか分かる!?」
「い、いえ……全然分からないでやんす!」
「お嬢! なんで俺たちゃ縄で縛られて、並べられてるんでしょう!」
「シャラップ! そんなことも分からないから、あんたたちは、いつまで経っても下っ端なのよ!」
「ぐさぁっ! む、胸に響くっす~!」

あれから船員全員へと突撃していったヴェーラだったが、どうやら正解を引き当てたのは、俺とラキスだけだったようだ。今俺の目の前に並べられている奴らは、ヴェーラの猶予期間内に正解を引き当てられなかった負け犬。実に情けない姿だ。しかし、部下どもに混じってライムが居るのはどういうことだ……?

「あの~ヴェーラ? なんであたしまで、繋がれてるのかな~?」
「うるさい、あんぽんたん!」
「あんぽんたん!? ちょっ、それは酷いんじゃないかな!?」
「あたしの望んだ答えを出さないライムちゃんなんて、あんぽんたんで十分だもん!」
「無茶苦茶言ってるよこの子……」
「いや姉御……姉御の普段の言動と、あまり変わらないでやんす」
「うんうん」
「な、なん……だと……!?」

部下たちの言葉に愕然とするライム。しかし、それについては同意するしか無いので、フォローのしようがない。というか、我が娘ながらどうしてああなったのだろうか。ライムが一番面倒を見ていたからなんだが……育て方を間違ったかも知れない。

「だが可愛いから良し!」
「相変わらずの親ばかっぷり。素敵ですアヴェス様」
「だろう! ヴェーラが可愛いのは事実だからな! さすがはラキスの娘!!」
「いえいえそんな……二人の娘だから……ですわ」
「おおそうか! そうだな! その通りだ!」
「はい。アヴェス様……」
「ラキス……」

お互いにヴェーラの可愛さを再認識したところで、俺とラキスは感極まったように見つめ合う。そのままゆっくりと顔を近づけ、互いの吐息が感じられるほどに……

「ってこらーーー! そこの二人! 何あたしを無視していちゃついてんだーー! あんたたちの娘なんでしょ、なんとかしろーーー!!」
「……ちっ、やかましいですね。ヴェーラ、こんな空気を読まない軟体生物、やっちゃいなさい」
「はいお母様! あたし、やりますっ!!」
「ちょっ!? 何っ!? 何をするつもりなのっ!?」
「トリックオアトリート。それは幸福か絶望を与える、運命の呪文……それをかけられた者は、その宿命から決して逃れること叶わぬ、呪いの儀式……」
「え、ちょっ、なに? 何か語り始めたんだけど……この子、頭大丈夫?」
「…………お、お嬢、おとなしくしておいた方が……」

俺もそう思う。というか、頭大丈夫って何だ。頭大丈夫って。人の娘に対して、この暴言。決して許すことはできない。
ラキスへと視線をやると、軽く頷く。どうやらラキスも同じ気持ちらしい。だったら遠慮はいらない。

「ヴェーラ……その儀式、許可するから存分にやれ」
「お、お頭っ!?」
「もちろん! やめろと言われても、絶対にやめないもん! こいつらのせーさつよだつは、あたしが握ってるのよ!」
「ちょっ!? 生殺与奪って、殺す気満々!?」
「うむ。止めるつもりはない。ただ、ちゃんと説明してからやるんだぞ。例え相手が悪くとも……」
「それを説明するのが、せめてもの礼儀! あたし分かってる!」

ヴェーラの答えに俺は満足げに頷くと、もはや言うことは無いと、一歩後ろに下がる。隣ではラキスが、どこか楽しそうに瞳を輝かせ、口元を押さえて笑っている。

「トリックオアトリートと言われた相手は、お菓子を捧げなければならない。それができない場合……何をされても文句は言えない……」
「え、なにそれ……し、知らないよ!? あたし、そんな儀式知らない!」
「言い訳は聞きたくない! お父様とお母様はちゃんとお菓子をくれたもん! 他のみんなは、何もくれなかった! 万死に値する!!」
「お、お嬢!? お、お許しを……! あっしらは、まだ死にたくないでやんす!!」
「慈悲を! 慈悲をください、お嬢!!」
「黙れ! 醜く命乞いをするな! それでも海賊か!!」
「「「へ、へへーーーー!!!」」」

………………いや、けしかけた俺が言うのも何だが、相変わらずノリが良いな、こいつら。ヴェーラもすっかり王者の気質を備えて……俺は嬉しいぞ!

「やだーー! あたしは死にたくないーー! ヴェーラに殺されるなんて、まっぴらだーー!」
「えぇぃ! 見苦しいよヴェーラちゃん! だけど、確かにこのまま一方的なのは、あたしの美学に反するわ。だから、あんたたちにチャンスをあげる!」
「ちゃ、チャンス……!?」
「おお、お嬢! さすがはお嬢! 女神のようでやんす!」
「ふっふっふ! そうよ、もっとあたしを褒め称えるが良いわ! そして、そのありがたさにむせび泣きなさい!」

一気にまくし立て、自分のペースに持って行く。我が娘ながら見事。しかし、チャンスを与えるって……何をするつもりなんだ?

「アヴェス様、あれをご覧ください。ヴェーラが持っているもの、まさかとは思いますが……」
「はっ……あ、あれは……! ライムが楽しみにとっていた……!!」

ラキスの指摘にヴェーラを見れば、確かに手になにやらお菓子を持っている。良く見なくても分かる。あれを手に入れた日、ライムが子どものようにはしゃいで、見せびらかしてきたからな。イラッとしたから良く覚えている。
しかし……あれをどうする気だ……!?

「くくく、まずはライムちゃんよ……これが何か分かるかしら?」
「んなぁっ!? そ、それは……! あ、あたしが大切に取っていた……帝国産のチョコレート!?」
「そう! 何年も前から予約して、この前ようやく買うことができたと、イラッとするくらい自慢気に語っていた……そのチョコレートよ!!」
「ちょ、ちょっと待って!? そ、それをどうするつもり……!?」
「どうする? ふふっ、決まってるじゃない! お菓子は食べるもの……それ以外に何があるって言うの?」
「なっ……や、やめて……そ、それだけは……! それを手に入れるために、あたしがどれだけ苦労をしたか……!」
「ん~? 聞こえないな~。あたしはチャンスを上げるって言ったのよ。これをあたしが食べる間、おとなしくしていたら……この戒めから解放してあげる……ふふっ、あたしってとっても優しいでしょ?」

天使のような愛らしい笑みを浮かべるヴェーラとは対照的に、ライムの顔は真っ青に染まっていく。いや……元々真っ青だが、それを踏まえても顔色が悪い。
しかしヴェーラよ……なんてむごいことを思いつくんだ。俺は……俺は嬉しいぞ!!

「そこで喜んではダメだと思いますが……まぁ、アヴェス様ですからね」
「ん? どうかしたかラキス」
「いえ別に。わたくしとしましても、お嬢様が痛い目を見る分には歓迎ですので。そろそろお灸を据えないとダメな時期でしたし」
「そうか」

和やかな俺たちとは違い、ヴェーラたちの方は、今まさにチョコレートの包装がはがされ、その甘美な匂いが広がっていく。
さすがは帝国産の高級チョコレート、見ているだけで美味そうなのが分かるぞ……

「あ、ああ……や、やめて……ヴェーラ、それだけは……!」
「ん~。とっても美味しそうな匂い~! 酷いよねライムちゃん、こんな美味しそうなものを独り占めしようとしてたんだもん」
「ち、違うの! ちゃ、ちゃんとみんなにも分けるつもりだったんだよ!? ホントだかんね!」
「で、本音は?」
「だーれが渡すもんか! これはあたし一人で全部食べるんだーー…………はっ!?」
「アホだ……」
「アホですね……」
「ヴェーラちゃん……アホだね」
「姉御……正直、庇えないっす……」
「どちくしょーーーー!! 誘導なんて卑怯よヴェーラ! 正々堂々勝負なさい!!」
「それ、あたしが一方的に勝つから嫌だよ~!」
「むきーーー! なんて生意気なーー!!」
「はい黙ってねー。あむっ! んんっ!? すっご~い! これ、本当に美味しい!!」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁっ!!!????」

哀れな……と同情することはたやすいが、俺が同情したところで、ヴェーラの気が済むわけは無いし、ライムに関してはいつものことだ。どうせしばらくしたら忘れてる。
ラキスもぐったりと落ち込むライムの姿をうっとりとした様子で見ているので、良いことだろう。

「ん~美味しかった~」
「ああああああ……もう生きていく希望が無い……うぅぅ、終わった……何もかも……」
「ん~、でもライムちゃん、あたしが食べてる間、とってもうるさかったからな~。やっぱり、このままね~」
「酷いっ!? あんまりだっ! この悪魔!」
「褒め言葉をどうもありがとー。じゃ、次は……Aね!」
「びくっ! な、何をするでやんすか……!?」
「Aはー……これっ!」
「げぇっ!? そ、それは……でやんす!!」

そう言ってヴェーラが取り出したのは、クッキーだろうか。丁寧にラッピングされ、想いが込められているのが分かる。しかし、Aにあんなものを送ったのは誰だ……?

「そう! これはAが陸地にいた時にできた、彼女からの贈り物! ひゅーひゅー! 熱いね! ラブラブだね!」
「お、お嬢っ!? それは……!!」
「「「な、なんだってーーーー!!?」」」
「て、てめぇっ!? どういうことだ! あれだけ女は作らないって誓ったのは嘘だったのか!?」
「貴様っ! この裏切り者めっ! おまえなんて、お嬢にやられちまえっ!!」
「そうだそうだ! お嬢! チャンスを与えるまでもねぇっ!! こいつは極刑だ!!」
「ひ、酷いでやんす! そんなのあんまりでやんす! 良いじゃないっすか! 俺に彼女ができちゃダメなんすか!?」
「「「ダメに決まってるだろっ!?」」」
「そんなっ!?」
「あー、盛り上がってるとこ悪いんだけど……BもCもDも……いるよね? 彼女。ほら、これ贈り物」
「「「「てめーらもか、この裏切り者めっ!!!!」」」」

おーおー、醜いねぇ。というか、ヴェーラのやつ、あんなものどこから手に入れたんだか……

「あらあら。怖いですね。いったい誰がリークしたんでしょうか」
「………………そうだな。怖いな」

うん。やはりラキスに逆らうのはやめた方が良い。
そんな俺の思いとは裏腹に、目の前では公開処刑が行われていった。お前等……強く生きろよ。

-3-

「…………悲しい、事件だったな」
「ええ。本当に……わたくし、恐ろしさで身体が震えてしまっています」
「俺もだ。まさか……あそこまでするとは、お菓子の恨みは恐ろしい……」
「いえ、恐ろしいのは……ハロウィンという儀式です。あのような儀式が異世界では行われているのですね」
「それも毎年だったか……ヒビキ、温厚そうな奴だと思っていたが、あのような地獄を味わっていたとは……人は見かけによらないってのは本当だな」
「確かに侮っていました。これからは、もっと敬意を持って接しなければいけませんね」
「お~い……二人とも~、言いたいことはそれだけかな~?」

目の前に広がる死屍累々とした状況に、揃って身体を震わせる俺たちに、ライムが息も絶え絶えに訴えかけてくる。というか、まだ意識があったのか。

「それは酷いよお頭~……うぷっ、ダメ……気持ち悪い……」
「そりゃ、ロープつけたまま海に放り出されて、ぐるぐる回転させられたら……そうなるだろ」
「分かってるなら……やめさせてよ……ヴェーラ、酷すぎ……」
「えへん! これで分かったでしょ! 自分たちが、どれだけの大罪を犯したのか!」
「…………絶対、ここまでされるほどじゃないと思う」

それには同感だが、ヴェーラのすることを止めるなんて、俺にはできない。薄情だと思うが、許せライム。

「ね、ね! お父様! ハロウィンって楽しいね! これからは、うちでも毎年やろうね!」
「「「ちょっ!?」」」
「あー、そうだな。ヴェーラが楽しいなら、俺は満足だ! 他にもやりたいことがあったら、どんどんやろうな!」
「「「マジでっ!?」」」
「うん! 他にも、白い髭を生やした老人が、決闘を挑んでくるクリスマスとか、お餅を誰かの喉に詰まらせる正月なんて行事もあるみたい! それから、豆を全力でぶつける節分なんてのも楽しそうだよね!!」
「へぇ、そんな行事があるのか……恐るべし異世界」
「本当ですね。とても楽しそうで……ふふっ、今からお嬢様がどうなるか……胸が躍ります」
「なんであたし限定なのかな!?」
「ほっ……あっしらの被害は少なそうでやんす」
「ああ。姉御に感謝しないとな……」
「あんたたちまで!? 酷い! なんで、いっつもあたしばっかり!?」
「え、何言ってるの? そんなライムちゃんばっかりに負担かけないもん。みんな平等だよ!」
「「「「………………」」」」

にぱーっと音が聞こえてきそうな程、愛らしい表情のヴェーラに感動したのか、ライムを含めた部下たちの表情が一斉に固まる。
いや、何度見てもヴェーラの笑顔は可愛いな。あれを見るだけでも、一日生きていた甲斐があるってもんだ。

「良し! それじゃ、これからその行事について詳しく話を聞こうか!」
「そうですね。知らないと対策も立てられませんし、行事をすることもできませんからね」
「うん! お父様とお母様に手伝ってもらったら、あたしなんだってできちゃうよ!」
「はっはっは! ヴェーラは凄いな! さすがは俺とラキスの娘だ!」
「ええ。わたくしも、こんな自慢の娘をもてて幸せですよ…………もう少し淑女らしくしては欲しいですが」
「えへへ~褒められちゃった。うん! あたし次の行事も目一杯頑張って、お父様とお母様に褒めてもらう!!」
「「「「や、やめてくれーーーーーーー!!!」」」」

ライムと部下たちの叫び声を無視しながら、俺とラキスはヴェーラを連れて、船内へと戻っていく。
こうして俺たち海賊の中では、異世界の行事がはやることとなり……ライムや部下たちの中で恐怖の代名詞となるのだが……それはまた別のお話。
とにかく、俺とラキス……そしてヴェーラは、どんな時でも笑って幸せに過ごしているのだ。

「って、あたしは幸せじゃなーーーーーーーーーい!!」

幸せだったら幸せなのだ。ライムも幸せなのだ。

「待ってろ! 絶対復讐してやるからな! あたしの立場を奪回してやるからなーーーー!!」


-完-


あとがき。
というわけで、トリックオアトリート。
ヴェーラにいたずらされたら、心に深い傷を負うことになるでしょう。
そうなっても、私は責任を取りませんのであしからず。
では、また別の機会で。

コメント

No title

おもしろかったですww
ところどころライムがヴェーラになってるけど…

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